折々に思うこと その29
風薫る5月、先週あたりまで、河川や公園、家々の庭や軒先、ベランダなどに、色とりどりの鯉のぼりが勢いよく泳いでいました。
毎年の風物詩と言いながら、日本の伝統文化のよさをしみじみと感じます。
目にするとウキウキしますね。
鳴鼓幼稚園でも学年ごとに、季節に合わせた制作活動の一環として鯉のぼりを作って保育室に掲示しています。
特に年長さんは、グループごとに大きな鯉のぼりを作りました。
その際にあったエピソードをひとつご紹介します。
年長さん達はそれぞれ4人でグループをつくりました。
できあがった鯉のぼりに色付けをする最終作業に入りましたが、ここであるグループで問題が起こりました。
鯉のぼりの色を「水色」にするか「黄色」にするかで意見がなかなかまとまらないのです。
侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になりましたが時間は経つばかり。 担任の先生もどうしたものかと。最後はじゃんけんで決めようということになりました。その結果は黄色派が水色派に勝って、「じゃあ黄色で」ということになりましたが、水色を推した子が実に残念そうな表情で、泣くのをぐっとこらえています。
するとそれを見ていた黄色派の2人が、「でもほかのグループもきいろをえらんでいるから、ぼくたちはみずいろでいいよ!」と言いました。
こらえていた子はそれを聞いて「ほんとにいいの!ありがとう!」と言って2人に抱きついたのです。
完成した鯉のぼりを見て4人はとても満足そうでした。
このほほえましい光景は、私が見ていたのではなく、このクラスの担任の先生の保育日誌の中に見つけました。
4人の表情を想像してみてください。
みなさん、いかがでしょうか。
「みずいろでいいよ」と仲裁案を出した2人の園児。
なんか大人ですよねえ。
また、この仲裁案を受け入れ素直に反応した水色派の子もいいですねえ。
年長さんになるとここまで相手の気持ちが分かるようになったのか。
知らないところで子どもは育っているんだなあと嬉しく思った次第です。
まだ新しい年度は始まったばかり。
これから展開する1年間の幼稚園生活の中で、いっそうおおらかに、素直に育ってほしいと願いました。
自然は、「山笑う」季節から「山滴(したた)る」季節に移行しつつあります。
休日に裏山に登りますと、木々の新緑の匂いにむせ返るようです。
すべての生物が躍動し始めるこの季節が私は好きです。
この季節を詠った俳句をご紹介して今日は失礼します(その2で一度ご紹介しました)。
万緑の 中や吾子の歯 生え初むる 中村 草田男