折々に思うこと その14

 新年度がスタートして1か月余りが過ぎました。
鳴鼓幼稚園でも、始業式、入園式、対面式(新入園児と在園児との)、父母の会総会・その後近くの公園までの親子遠足(通称「にこにこの日」)、子どもの日の集い等の行事が行われました。

 これらの行事を実施するにあたっては、年間の行事計画で主担当者がそれぞれ決まっていますので、その主担当者が予め実施計画を作成し、職員会議で提案、審議して承認を受けた後、みんなが準備に動き出すという運びになります。

 主担当者が職員会議で提案するのが「〇〇〇実施計画(案)」というもので、その内容は、通し番号順に、1に「目的」、2に「目標」、3に「実施期日」、4に「時程」……というように続いていきます。
今日は、この1の「目的」と2の「目標」について私の解釈をお話ししたいと思います。
あまり硬い話にならないように心がけます。

 「目的」とは、「この行事は何のためにするのか」ということです。
 「目標」とは、「この行事で子ども達に身につけさせたいことは何か」ということです。みなさん、お分かりのことと思います。

 提案者には、この「目的」と「目標」を必ず書くように言っています。

「目的」と「目標」は似た言葉ですが、意味するところは上記のように少し違います。
以前、中学校にいた時分、全校集会で、中学生にその違いを次のように説明したことがあります。

 『みなさんは、「目的」と「目標」の違いについて考えたことがありますか。
私も含め、あまり違いを意識せず、曖昧に使ってしまっている気もしますね。
今日はこの2つの言葉の違いについて一緒に考えてみましょう。
これから、3年生のA君と私の会話を例として紹介します。
よく聞いてください。
 私: A君。君は最近よく勉強しているみたいだね。定期テストの成績も悪くない
君は一体何のために(目的)勉強しているのですか?
 A君: はい。僕はできれば将来医者になって、医療に恵まれない地域の人達のを救ったり、けがや病気を治したりして、そこで無くてはならない存在になりたいと思っています。そのために、今、一生懸命に勉強しています。
 私: それは素晴らしい志ですね。ところで、君の今の目標は何ですか?
 A君: はい。僕の今の目標は、来年の高校入試で○○高等学校の理数科に合格し、そこで3年間しっかり勉強して、○○大学の医学部に合格することです。
 私: よく分かりました。しっかり頑張ってください。』

 この例話から言うと、「目的」とは、A君が目指したい最終的な、または究極のゴールであり、「目標」とは、そのために越えなければならない目の前の(身近な)ハードルということができるでしょう。
A君は、多くの人を救うために医者になりたいという目的を持ち、そのために、高校入試で○○高校の理数科に、その3年後に○○大学の医学部に合格するという目標を設定しているのです。

 園児達が、計画された行事に進んで参加し、「ああ、楽しかった!またやりたい!」と言えば、おおむね行事としては成功でしょう。
しかし、指導者はその行事の中で、子ども達に、友達と協力したり、自分なりに方法を工夫したり、最後まであきらめずに取り組んだりする場面を意図的に仕組んで、「ああ、楽しかった!」とともに、協同性や自立性、粘り強さ、達成感等を身に付けさせたり、味わわせたりしたいと願っています。
そんな体験の積み重ねは、必ず子ども達の心の成長に繋がっていくと思うのです。「中身のある体験に勝るものなし」ですね。
忘れてはならない教育者としての心構えだと言えるでしょう。

 ただ漫然と、「去年もやったから」という認識での行事の計画、行事が終わった後、「子ども達、喜んでやってたからこれでいいよね」という振り返りは、子ども達をあまり伸ばさないのではないかと思います。
幼稚園は学校です。学校ならば、「預かった子ども達を卒園までにこのような姿に育てたい」という、その幼稚園なりの教育目標があります。
その教育目標を達成するための日々の教育内容(行事や活動)はとても大切です。

 5月以降の行事や諸活動にも、毎年やっていることだからではなく、常に新しい心で取り組みたいと思います。
硬い話になってしまったでしょうか。
失礼します。