折々に思うこと その8

 前号の最後に、今年甲子園で優勝した慶應高校について少し触れました。
尻切れトンボになりましたので、高校野球について少し話をさせてください。
高校野球と言えば丸刈りの頭が定番ですが、慶應高校野球部は、長髪の選手が多かったですね。監督さんによると髪型は自由だそうです。
丸刈りを希望する選手も少なからずおり、そこは各々選手の意思に任せているということです。

 チームづくりのポイントとしては、監督さんの指示通りに動くのではなく、状況を自分達で判断して、その状況に対応したより適切なプレーを求め、最後は勝利を目指すというもの。
普段の練習内容も、まずは選手達で考え、監督さんと話し合ってお互いに納得して決めていくとのこと。
随分選手の自主性を重んじる学校だなと思います。

 野球に限らずどのスポーツでも、試合の中で思わぬ状況が生じることが結構あります。
そういう時は選手だけの瞬時の判断が求められることも多いのです。
普段からの「考える」、「感じる」野球がこんな場面で生きてきます。
指導者の指示通りにしか動けない選手やチームはそこでつまづき、崩れていきます。
このような経験を積んだ選手達は、その後大学野球や社会人野球、またはプロ野球の世界に進んでも、自分で「考える」、「感じる」、「想像する」ということを自分の真ん中に置いて野球に取り組んでいくのではないでしょうか。
いや、野球は高校までと自分の中で決めている選手も多いと思いますが、彼らもまたその後の新しい世界で、自分で「考え」、「感じ」、「判断する」力を使って人生を切り開いていくことと思います。
少なくとも、人生でうまくいかなかった原因を、親や周囲の人達に押し付けて責任逃れをするような大人にはならないのではないでしょうか。
中学校や高校で一生懸命に部活動に取り組む意義の1つはこのあたりにありそうですね。

 さて、話を幼稚園教育に移します。ちょっと固いですが、幼稚園には、園児が入園して卒園するまでに身に付けてほしいことを定めた「幼稚園教育要領」というものがあり、その内容は、ほぼ10年ごとに見直されています。
今回、新しく取り入れられたものの1つに「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」というものがあります。
例えば、『健康な心と体』、『自立心』、『協同性』、『規範意識』、『社会との関わり』、『言葉による伝え合い』等です。
そんな力が園児に身に付くの?という疑問もおありかと思いますが、そこは園児が育ってほしいレベルを想定し、繰り返し関わっていけば身に付いていく、というのが私の実感です。
園児達の吸収力、成長力、意外とありますよ。 私は、この「10の姿」を身に付けて(芽生えを身に付けて)卒園し、新しい集団の中で自分を出しながら小学校生活を楽しんでほしいと思います。

 鳴鼓幼稚園では、「10の姿」が身に付いたかどうか判断できるように、具体的な園児の姿や行動に落とし込んで、本園の職員と保護者の皆さんにアンケート調査をしています。
これについては、調査の時期に詳しく述べたいと思います。
失礼します。

 例えば、『自立心』では、「身支度(衣服の着脱、ボタンの締め外し)や諸活動の準備、後片づけを、大人の助けを借りずに自分でやろうとする」とか「跳び箱を跳ぶときに、最初は跳べなかったが、指導者から助走のスピードや手の付き方、体の傾け方などの教えを受け、何とか自分の力で跳ぼうと練習を続ける」など。
『社会生活との関わり』では、「友達や先生、地域の方々に進んで挨拶をする」とか「地域の小学生や中学生と楽しく交流したり、訪問した役場や図書館で、考えてきた質問をして、仕事の大切さやたいへんさを感じ取ったりする」など。
子ども達の日々の活動の目標に設定し、できつつある姿を認めていくということです。
こういうことを意識して子ども達に関わっていくことは、自分に自信をもっていくという「楽しくやっていたからよかったよね」で終わるよりも育ちの過程はよりはっきりとつかむことができると思います。