折々に思うこと その4
対馬の思い出をもうひとついいでしょうか。
対馬には、日本人が大切にしてきた行事や催しがまだいくつか残っています。
春分、秋分時の光景もそのひとつです。
9月の「秋分の日(9月23日ごろ)」のことです。
私が住んでいた地区は、家庭の多くが漁で生計を立てておられました。
でも、この日は、一斉に漁は休み。学校の部活動も中止です。
皆さん、何をされるのかというと、家長の下に親族一同が集まり、まず先祖のお墓の掃除が始まります。
丁寧にお墓を拭き上げ、周囲の雑草を取り除きます。
きれいになった後は、お墓の前に茣蓙(ござ)を敷いて、みんなで会食です。
円座になり、亡くなられたご先祖を偲んだり、お互いの近況報告をしたりして懇親が続きます。
私は、「ここはいい催しが残っているなあ」と散歩しながら思いました。
家に帰ってくつろいでいると、玄関のベルの音。ドアを開けると勤務校の生徒です。
「よう、どうした」と私。「ばあちゃんが教頭先生に持っていけって」。
プラスチックの容器に大きなおはぎが4個。
「いやあ、ありがとうね」とお礼を言うと、お孫さんは恥ずかしそうに笑って帰りました。
頂いたおはぎたるや、厚みがあり、直径10センチ以上の特大サイズ。
甘いものも好きな私でさえ2個は無理です。
残りは冷蔵庫へ。
翌日、農作業をされているおばあちゃんに会った私は、「昨日はおいしいおはぎを有難うございました。
とてもおいしかったです」。
すると、おばあちゃん、「そりゃよかった。よかった」。
夕方、お孫さんが、またおはぎを4個持って玄関に。
重なるご厚意に感謝ですが、「まだ冷蔵庫に3個残っているよね……(私のつぶやき)」
さて、ここからは子ども達の楽しい声が響く鳴鼓幼稚園のお話です。
今回は園舎の立地について。特徴は、オープンなつくりです。
敷地は目の粗い格子状のフェンスで四方を囲まれていて、外からは園舎の概容や園庭がよく見えます。
子ども達が鬼ごっこをしたり、遊具で遊んだりしている様子を、時折外の道を通る住民の皆さんが、歩みを止めて、楽しそうに見ておられます。
子ども達の様子や園の雰囲気がそのまま伝わるのです。これは、何よりの園の紹介であり宣伝になります(園長はすぐ「宣伝」などという言葉を使いたがります)。
しかし、入り口は押せば簡単に開きますし、フェンスの高さも1.5Mほどなので、侵入するのは簡単です。
この問題にどう対処するか。
本園では、年間4回の避難訓練を実施していますが、そのうち1回は「不審者対応」です。
園庭で子ども達を遊ばせている保育士が、外から子ども達をじーっと見つめている怪しそうな人物を察知すると、低い声の合言葉で子ども達に危険を知らせ、子ども達は保育士とともに、静かにさりげなく園舎に避難するという、極めて地味な訓練です。
学年やクラス単位でも数回動きを練習しており、何気なく、さーっと潮が引くように動くことができるようにしています。
火事や地震ではなく、人の卑劣な行為から職員と子ども達を守るための訓練とは……。
何か割り切れない思いもしますが、みなさんはどう思われますか。