折々思うこと その2
山したたる季節になってきました。
朝早く、琴の尾岳への登山道を30分ほど散歩しますと、道の両側の、初々しい若葉をたわわにまとった木々の枝が、その重さに耐えかねるように、山道の方へお辞儀をしています。
周囲は若葉のむせ返るような匂いに満ちており、時折恋の相手へのアピールなのか、それとも縄張りの確認なのか、鶯の澄み切った鳴き声が、一定の間隔を置いて私の耳に響いてきます。この世に生きるもの全てが躍動する季節がやってきました。
中村(なかむら) 草田男(くさたお)という俳人の次の句が浮かびました。
「万緑(ばんりょく)の中や 吾子(あこ)の歯 生え初(そ)むる」
(初夏、辺りの樹木が一面新緑に染まった中で、我が子に歯が生え始めた!)
3年間社会を振り回したコロナがほぼ収束し、世の中の動きがコロナ以前に戻りつつある中で、鳴鼓幼稚園も令和5年度の活動が始まりました。
本園では、4月1日から、園児も職員も基本的にマスクは外す、玄関前の消毒液も撤去する、できるだけの無言給食(黙食)も止める等の措置を取りました。
ただし、手洗い、うがい、室内の換気、水分の適度な摂取等には配慮しています。
新年度早々は市や県の幼稚園協会の総会や各種部会が多く組まれており、私も4、5月は週に1、2度会合に出かけますが、その中でマスクをしていないのはほぼ私のみです。
「あれっ、みなさん、いつからマスクを外されるんだろう?
3月13日(政府が、この日からマスクの着脱は個人の判断によるものとするとした日)でもない?新年度の始まりの4月1日でもない?5類に移行した5月8日でもない?」失礼ながら、この光景は周囲の様子見でしょうか(外す人が多くなったら外そうか)?それともまだコロナが怖い?はたまた、3年間のマスク着用に慣れてしまい、この方が世の中で身を処しやすい?まだマスクをされているみなさん、いかがでしょう?外すとスカッとしますよ。
ところで、新年度になり、多くの活動を仕組む中で、毎週木曜日の午前中は、外部から講師を呼んで「体育教室」を実施しています。
2階の「おゆうぎ室(保育室の2倍ほどの広さがある)」が会場です。
1クラス30分というあまり長くはない時間ですが、一生懸命の真剣さあり、うまくできるかの不安あり、講師得意のギャグ的お笑いありの、硬軟織り交ぜた中身の濃い活動内容です。
講師が工夫したさまざまな動き(種目)を通して、身体能力を総合的に伸ばすことができ、協調性や規範意識、友達への配慮等の社会性も養われていきます。
リラックスした雰囲気の中で、周囲の励ましでチャレンジ精神も身に付くとともに、運動技能が少しずつ伸びていくのが園児自身にも自覚できるので、子ども達にとって、1週間の生活の中で最も楽しみな活動の1つになっているようです。
年少さんのときは「鉄棒怖い……」と顔がこわばって尻込みしていた子どもが、年長さんになると、前回りはもちろん、連続前回り、足抜き回りから後ろ回り、最後はみごとに逆上がりを決めて卒園していきます。
自信満々の表情で。
そんな子どもの表情を見る度に、講師への感謝の気持ちと、園長としての幸せが私の心に湧いてきます。